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biscuit notes

Spotifyプレイリストとか音楽のもろもろをつらつらと

Please Mr. Lostman / the pillows



中学時代、田舎に住んでいたこともあり、テレビを付けても有名な人しか出てないし(そもそもチャンネル数が都会の半分以下)、お金もないから雑誌もほとんど買わなかった。いまほどネットも普及していなかったから、音楽の情報をどこで得ていたかというとラジオ、主にNHK-FM「ミュージックスクエア」だった。

なんでミュージックスクエアを聴き始めたかというと、当時一番好きだった大黒摩季が初めてラジオに出る、その番組がミュージックスクエアらしいという話を3つ上の姉から聞き、最初は大黒摩季が出たときだけ聴くつもりだったけど、気付けば勉強とかで机に向かう時のお供として重宝するまでになっていた。この番組で好きになったバンドやミュージシャンは数知れず。売れる前のゆずもBUMPも、この番組で初めて知った。

当時番組のDJが中村貴子さん。トークも軽快で面白いが、なにより節々に音楽に対する愛情のようなものが感じられる人。そんなDJが番組内で強く推していたバンドがthe pillowsだった・・というのは後になって気付くことになるのだが、この番組を聴き始めた当初は、とにかく実家のテレビではまず聴けないような多種多様の音楽がながれてくることがただただ楽しかった。そんななか、ある音楽が耳に飛び込んできた。その曲の冒頭の歌詞はこうだ。


誰の記憶にも残らない程 鮮やかに消えてしまうのも悪くない



the pillowsの「Swanky Street」である。衝撃的だった。今まで自分が知ってた唄の歌詞は、もっと抽象的だったり、もっと嘘くさかったり、もっと無理やり元気づけたり、無理やり恋愛と絡めてきたり・・とりあえず、自分のなかではしっくり来ないものが多かった。でも、この曲はなんとなく自分とフィットする何かを感じた。それと同時に、「こんな歌詞、書いちゃっていいんだ!?」という驚きもあった。

とにかく「このバンドはどの曲もいい曲に違いない」という直観スイッチが入ってしまった自分は、すぐさま家の近くのお店でthe pillowsのCDを探したが、当時は田舎に流通するレベルではなかったのもあり、あったのはシングル「ストレンジカメレオン」だけだった。



君といるのが好きで あとは ほとんど嫌いで
まわりの色に馴染まない 出来損ないのカメレオン



有名な話だがこの曲、それまで売れ線の音楽を要求され、それに応えてきたが全く売れず、バンド自体が疲弊しきった状態のなか、それまでのポップ路線から一気に方向転換してバンド色を強く押し出した捨て身の1曲。これを機にバンドが徐々に好転していく、完全なるバンドのターニングポイントとなる曲を、たまたま田舎のCDショップで見つけることができたというのは、ある意味運命といってもいいと思う。

ここで紹介した「ストレンジカメレオン」と「Swanky Street」が収録されているアルバムが、『Please Mr. Lostman』である。「SUICIDE DIVING」みたいに自殺をテーマにした歌詞を軽やかなメロディラインで歌い上げるのもそうだが、曲によっては厚いギターが鳴り響くなど(このころはまだ現在の独特なサウンドを確立するまえの過渡期ではあるが)、バンドサウンドも当時の自分には衝撃だったし、挙句の果てにはバンドのフロントマンである「山中さわお」という名前にすら「さわおって名前あるんだ!」という変な衝撃すら覚えた・・これはどうでもよかったか(ノ∀`)

さっき上に記載した歌詞含め、特に当時は、傍からみたらちょっとじめっとした暗いイメージをもたれかねないような歌詞が多かったが、個人的にそれは決して「どうせ自分なんて」みたいな、どこか予防線を張ってるようにも思えるタイプのネガティブさではないと感じている。話はそれるが、個人的には「どうせ自分は」ベースで「こっちの世界に来いよ」とひきづりこまんばかりに話しかけてきたリ、「どうせ自分は」同士で馴れ合ったりしているのには嫌悪感しか抱かないし、そんななかから良い関係・良いものが生まれるはずがないと思っている。

the pillowsの歌詞には、なんとなく人と違う感覚、人とのズレを感じてイラだったり悲しくなったり色んな感情が蠢き、でもそれでも人には認められたいし、信じてくれる人と一緒にいたい・・完全なダークサイドではなく、どこかに光を求めている・・そういうのを曲によっては強く感じる、それが自分の気持ちとしっくり来る理由なのかなと考えている。恋愛をモチーフにした曲の場合、「君=異性」というのが王道の方程式なのだが、the pillowsの場合は「君=理解者」と解釈したほうがピタッと嵌ることが多い。特にリリース当時は、自分たちの音楽を理解してくれる人はもっと居るに違いないという気持ちはきっと強かったはず。不遇な時代にも心を完全には曇らせず、信じるメンバーとともにシンプルに自分たちの信じる良い音楽をつくってきたことで、少しずつ自分たちが望んでいた晴れ間がみえるようになったのだと思う。

そんなthe pillowsも、このアルバムから19年経った。昔とはくらべものにならないほどの理解者を得たバンドは、紆余曲折はあれど、今なおバンドは好調を維持しながら歩み続けている。そして、今なお自分のなかで心のベストテン第一位はthe pillowsであり続けている。あと1週間もしないうちに新しいアルバムが出る。今なお新譜は楽しみで仕方ない。とても幸せなことだと思うし、誇らしくもある。
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