新体制RYUTistの単独ライブを5月6日に控える中、あらためて昨年リリースの最新アルバム『(エン)』を振り返りつつ駄文をしたためてみました。(
各種サービスで購入・試聴できます)。
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自分がRYUTistを聴くようになった経緯と前作『ファルセット』の感想文は
コチラ。
その後、ライブを見たときの感想文は
コチラ。
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佐藤乃々子さんが4月にグループを離れ芸能活動を引退してから、もうひと月。体調不良により本来であれば2020年『ファルセット』リリース後の引退を考えていたところ、コロナの影響でファンに会える機会が断たれたこともあり、直接顔をあわせる機会ができるまでと今まで活動を続けてきたそうで。そのなかで生まれた『(エン)』は、もしかするとコロナが無かったら今とぜんぜん違った形になっていたかもしれないです。
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強力な楽曲制作陣含め、様々な『縁』でもって出来上がった今作。ポップミュージックのあらゆる要素を盛り込んだ王道ともいえる作品だったのが前作『ファルセット』。それに対し、
9曲30分というコンパクトな中に様々な角度から前衛的な要素を詰め込みつつ、一貫してドリーミーな空気感があるコンセプト色が強い怪作が『(エン)』…と、音楽詳しくない人間が無理やり表現。
何も知らない人が『(エン)』を聴いてしまうと「え、なにこの尖ったグループ…?」と思われるかもしれません。が、RYUTistは長年に渡って様々なジャンルの曲を唄ってきていることを知っている人たちにとっては、今作が突然変異で奇をてらいはじめたわけでなく、これまでの活動の延長線上、「まあ、こういう方向も行くよね、たまには」という感覚の方も多いのではと思っています(いや、違うかもw)。
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おもえば2021年に配信リリースされた「水硝子」で今作の布石が打たれていました。当時聴いたときは音の細やかさに驚きつつも、直感的な心地良さにヤラれた記憶です。MV美しすぎてめっちゃ再生したなあ。
その後も配信リリースなどで徐々に『(エン)』の全貌を明らかにしつつ、ファンの耳を徐々に慣らしていったのは運営サイドの好采配でしたね。さすがに「うらぎりもの」は最初聴いたときだいぶビビりましたがw
その「うらぎりもの」と「しるし」を2曲同時リリースしてくる巧みさも良かったですね。「しるし」は2022年よく聴きました。良い曲すぎる。
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乃々子さんは「オーロラ」冒頭などでも聴かれるように冴えわたる低音ボイス、そして長年歌い続けてきた人のなかでおそらく歴代トップクラスに癖のない真っすぐな歌い方がとても素敵で、RYUTistの歌に安心感を与えてくれる存在だったと思っています。
RYUTistはパフォーマンス含め、音楽への没入感にすごく惹かれるところがありまして。いわゆる「歌が上手い」って、声が出てて抑揚があって音程が取れてビブラートとかテクニック持ってて…とか、いかにもテクノロジーが喜んで高得点発動しそうな要素よりも、楽曲をどう表現していくかの方が自分は大事だと考えています。
RYUTistはメンバー全員その表現力が優れていて、そのなかで乃々子さんの歌声は、ただそこにあるだけで自然と生まれる安心感によって4人の歌のバランスが自然と構築され、だからこそ他の3人が安心して伸びやかに歌える、そういう要素もあるような気がしています。それだけ乃々子さんの声って要所要所で締めてくれている印象が、個人的には強いのです。
グループとしては12年間、実郁さんが加入してから7年間積み上げてきたバランスと説得力。
『(エン)』は4人の『円』熟さがあったからこそ辿り着けた新たな境地だったなあと。この楽曲たちを、ここまで表現できるグループ、正直そうそういないんじゃないですかね。
ナタリーの特集でプロデューサーさんがおっしゃってましたが、楽曲提供のオファーをしても、
アイドルは難しい、そっちの業界は分からないと断られるケースも結構あるとか。この作品によって、「こんな曲もいけるのか、ならこういう曲はどうだろう」と、よりグループとしての幅が広がると良いなと。
乃々子さんとつくった『(エン)』が、次へ向かうRYUTistの「標」になってくれればと、そんなことを願うばかりです。
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4/14に開催されたイベントにて、新体制になって初のライブが行われました。メンバー3人ど緊張のなか、不安定さが如実に顔を出しつつも4人の頃と変わらぬ空気感、美しいパフォーマンスは健在。ラスト「黄昏のダイアリー」の頃には緊張もだいぶ和らぎ、今まで以上に伸びやかな歌声を響かせていて、3人になってもきっと大丈夫と感じた次第です。
乃々子さんが居ないことによって変わるグループのバランス。新たな境地に向かうため、きっとまだまだ“3人のRYUTist”を構築中の段階。5月6日はその途中経過を目に焼き付けつつ、シンプルに素敵なパフォーマンスを楽しみたいと思います。