RYUTistは2011年に結成され、現在は、五十嵐夢羽、宇野友恵、横山実郁、佐藤乃々子の4人から成るアイドルグループ。最初グループ名を聞いたときは「りゅーてぃすとだし(琉球だから)沖縄出身?」と思ったもんですが(うちのカミさんも同じこと言ってたw)、新潟県の古町を拠点として活動しており、当然メンバーも全員新潟出身。新潟のアイドルとして確固たる地位を築いているNegiccoと同じく、色褪せないポップミュージックを歌い踊る正に王道アイドル。
(以下、ちょっと前置き長いので公式動画まで読み飛ばしていいと思います)
自分が初めてライブを見たのは、2019年のタワレコ社長主催イベント
「Pop’n アイドル04」。正直エビ中とギャンパレ目当てで行った自分としては、まさかこんなに出るグループ出るグループにいちいち興奮するイベントになるとは思いもしなかったのですが、その中でひときわ異彩を放ち個人的に一番衝撃だったのはRYUTistでした。
多くのアイドルは動きを大きく見せたり躍動感を出すために、手をグッと伸ばしたり直線的な動きを多用していると思うのですが、RYUTistの場合はどちらかというと曲線的で柔らかい動きが他のグループより多いなと感じました。例えると、まるでアイスショーを見ているみたいな優雅さや気品の高さのあるパフォーマンスで、なんだかすごく尊いものを見ているような気持ちに。4人の個性というよりも、音楽と溶け込むように一体となっている4人の姿がとても美しく、
「やばい…やばいぞ!」と完全に語彙力をなくすレベルで興奮したのが、はじめてライブを見た感想です。自分の近くにいた遊び人(ギャンパレのファン)とおぼしき方々も「めっちゃいい!」と言っていたのもよく憶えています。なお、その人たちも「りゅーてぃすとって沖縄の人だと思ってたぁー」って言っていたような・・(汗)。
このイベントきっかけでRYUTistをちゃんと聴こうと過去の作品を漁ってみると、「なんでいままでちゃんと聴いてなかったんだ俺?」というくらい発見の数々が。まずデビュー時から3rdアルバム『柳都芸妓』(2017)までの間、第二期タンポポ楽曲のアレンジでもお馴染みの
永井ルイさんが作詞作曲アレンジなど数多くの楽曲に携わっていたこと。一聴しただけで分かる、あのコーラスワークとギターの音色が、まさかRYUTistで聴けたなんて…。そして、それ以降もTWEEDEES(清浦夏実、沖井礼二(ex. Cymbals))やインドネシアのシティポップ・バンドikkubaruと、
星野みちる社長にゆかりのある方々が楽曲提供していたとは知らなかった…。いずれにせよ、自分がRYUTistにハマるのはどうやら必然だったのだなと、このとき悟りました。
そんなこんなで今年『ファルセット』を購入するに至ったわけです。2018年の「青空シグナル」「黄昏のダイアリー」、2019年の「センシティブサイン」「きっと、はじまりの季節」の4枚のシングルを経てリリースされた、『柳都芸妓』から3年振りのアルバムということもあり、新たなステージに向かったこの3年間の集大成的な作品になっています。今までのアルバムも素晴らしいポップミュージック満載でしたが、『ファルセット』はさらに楽曲の幅が広がり、それに呼応するように歌の表現力もさらなる広がりをみせています。結果的に、アイドルファンのみならず聴く人を選ばず響く作品になったのではと、そんな予感がしています。というわけで、ここから公式動画を一気に貼りまくります。
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まずはイントロダクション的な
1曲目「GIRLS」からの
2曲目「ALIVE」の素晴らしさ。管楽器と歌声が織りなす多幸感。中盤には、冬から春にかけての情景が思い浮かぶような語りパートがあったり。「ALIVE」は6分50秒というアイドルグループには珍しい曲の長さなのですが、全くそれを感じさせないつくりになっています。
3曲目「きっと、はじまりの季節」でさらにしっとり歌を響かせています。これぞ王道、勢いでごまかすわけでなく、ちゃんと歌を届けている。当たり前のようで、だけどテレビとか見てても意外とそうじゃない人たちが多い気もするし、実は当たり前じゃないような気がします。
4曲目「ナイスポーズ」ではまるでスキップしてるみたいな軽やかさで歌い上げているのですが、曲展開やメロディラインがめちゃ複雑で、よくこの曲を涼しげな顔(声)で歌ってるなと…全然当たり前じゃないよなこれは…(実際、メンバーによってはレコーディングで結構苦労したみたいですが)。
そして
5曲目「好きだよ・・・」はアイドルグループ的にはど真ん中なミディアムテンポのラブソングなのですが、逆に驚きました。RYUTistは、アルバムタイトルにあるようにファルセットに魅力がある、繊細で透き通った歌声のイメージが強かったので、この曲での強く感情をこめて張り上げた歌声に「まじか!」ってなりました。なるほど、このグループは曲によって如何様にでも変化できるから、しっかり曲と一体となって歌が届くんだなあと、ここで改めて納得しました。
6曲目「センシティブサイン」は一転して穏やかで温かみがあって素敵です。もうすでにこういう曲を歌わせたときの安定感・安心感みたいなものを、このグループには感じますね。
7曲目「絶対に絶対に絶対にGO!」も軽快にピョンピョン飛び回った歌声で、かわいらしさ全開です。1~4曲目には比較的アイドル寄りじゃないコアな楽曲が並んでいたのに対し、5~7曲目でアイドルだからこそ出来るポップな楽曲が並び、RYUTistというグループの器の大きさを物語っていると思います。
8曲目「青空シグナル」でも疾走感いっぱいの楽曲に、振り落とされることなく曲と一緒に無邪気に駆け上がっていくような歌声がたまらないです。で、ここからの
9曲目「時間だよ」の高低差にビビリました。一気に大人で落ち着きを纏い、シックなダンスミュージックに乗せてウィスパーボイスとファルセットふんだんに歌い上げる様は本当にカッコ良い。で、そこから
10曲目「無重力ファンタジア」でのゆったりたゆたうような歌声に痺れる、この一連の流れが最高。ちなみに初めてのライブで見た「無重力ファンタジア」~「Blue(from 2nd『日本海夕日ライン』(2016))」の流れも本当に良くって、公式にもライブ映像があったので貼っておきますね。
(無重力ファンタジア~Blue)
ラスト前の
11曲目「春にゆびきり」で一気にシリアスモードに。無機質な打ち込みサウンドをバックに歌う彼女たちの声はむしろ優しく響き、グッときます。PV終盤では、コロナの影響でライブが中止になった様子、そこから4人の迫真のダンスシーン(RYUTistでPVのダンスシーンは珍しい!)、最後の「またいつか」と約束を表すようなゆびきりポーズにも胸をキュッとされてしまいます。
最後は
12曲目「黄昏のダイアリー」で大団円。最初から最後まで良い曲ばっか。そして様々なミュージシャンが提供した多彩すぎるほどの楽曲たちが違和感なく一つにまとまっている凄みは、曲順の妙も勿論あるとは思いますが、それ以上に一貫して4人のメンバーが楽曲と一体になって歌を届けていることに尽きるのではないかと、私は考えています。
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あいみょん、ヒゲダンなど、良い曲を歌う人たちが真っ当に注目される中、ふとアイドルシーンに目をやると、どちらかというと奇抜なことをやっている人たちの方が注目されたり売れている気がします。リスナーの種類が違うと言われればそれまでですが、良い曲を良い歌で…というのは、ジャンルもカテゴリーも関係ないと思うんですがね。「楽曲派」なんて言葉もありますが、アイドルだって曲歌ってるんだから、聴き手がその曲にこだわるのは当たり前の話だと思うんですよ。
このアルバムが、ジャンルとかカテゴリーとかいうくだらない枠を飛び越えて、いろんなの方々の耳を歓ばせる、そんなステキな出来事がもっと増えることを願ってやみません。