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biscuit notes

Spotifyプレイリストとか音楽のもろもろをつらつらと

金八 / 私立恵比寿中学


「アイドル」という言葉は近年、「ゆとり」などと同様、世間的にはなんとなく下に見られている...というと言い過ぎだけど、何かあったら一括りに皆んなまとめて「これだからゆとりは…」みたいな感じでディスってみたり面白おかしくいじってみたりするときに便利な、そんな曖昧で都合の良い言葉に成り下がっているようにも感じる。人によっては「アイドルはどんなジャンルでも飲み込める凄い存在なのに、アイドルを差別用語のように捉える必要はない」と言う人もいて、それは正しいと自分も思う。ただ一方で、いまだにテレビなんかでアイドルヲタクの気持ち悪さをフィーチャーした特集とかやってるのを見ると、「いまさら何がオモロイんじゃこんなもん」と思いつつも「あー世間的にはこんなもんなんだろうなあ」と、居心地の悪さにも似た感情を抱くことも間々。

でも結局、アイドルだろうがバンドだろうが、楽曲・サウンド然り、メンバーの歌声などの個性然り、何かしらの魅力を感じないと、CDも買わないしライブにも行かないわけで。ジャンルという色眼鏡、他人がどうとかは関係なしに、シンプルに魅力があると感じるかどうかが全てだと、今の自分はそう感じている。

・・・と、それはそれは正論めいたことを言ってしまっているが、人間そんなカンペキではないので知らない間に色眼鏡を掛けていることが多く・・(昔よりはマシなはず、きっと。汗)。私立恵比寿中学(以下、エビ中とも記す)にしても、はじめて聴いたのが「放課後ゲタ箱ロッケンロールMX」(アルバム『中人』収録)ということもあってか勝手にイロモノと認識してしまい、それがしばらく消えなかった。今となっては何度となくライブに行ってしまうほど魅力を感じる存在となっているので、色眼鏡は本当に無用の長物だ。

放課後ゲタ箱ロッケンロールMX  横浜アリーナ公演(2014) / 私立恵比寿中学


はじめてエビ中のライブを見たのは、2013年12月におこなわれた大学芸会(要は、デカイとこでのライブ)。ちょうどメジャーデビューしてから最速でさいたまスーパーアリーナで公演を果たした記念すべきライブであった。そのころはメンバーは9人居たのだが、たぶん5人くらいはアンコールあけの段階でヘバってたように記憶している。以前にライブを見たことがある事務所の先輩でもある“ももいろクローバーZ”と比べると、各々の基礎体力、グループとしての一体感などの面では確実に劣っていた。どちらかというと、触れると壊れそうな繊細さというか、危うさというか…。それでも、実はポップで良い曲が多いという驚きによって色眼鏡は外され、あらびきながらも各々バラバラな個性に、なんとなく惹かれるものを感じたライブであった。

その後、2014年4月の日本武道館でのライブを最後に、瑞季、なっちゃん、裕乃さんという、それぞれがそれぞれにしっかりしていた3人が同時に卒業し、新たに別グループで活動していた若手2人が加わるという大転換期が。これまでの状態を維持するだけでは確実に崩れてしまう不安定なグループ状況は、逆にピンチはチャンスとばかりに新たな道を模索する良いタイミングとなり、結果的にはライブ等を重ねていくうちに9人時代とは一味違う新たな魅力を放つまでに成長していった。そうしたなかで2015年1月にリリースされた2ndアルバムが『金八』である。
エビ中の特徴のひとつとして自分が感じているのは、とにかく1曲のなかでの情報量の多さ。それは、「金八DANCE MUSIC」みたいにもともと曲自体の情報量が多い楽曲に限らず、どんな曲であろうと歌声のクセが違う一人ひとりが縦横無尽に駆け回ることに起因していると思う。ここらへんはきっと聴く人によって良し悪しあるんだろうけど、耳が慣れてしまっている自分にとっては違和感はないし、むしろそれがグループの一貫性とすら感じてしまう。それは、8人になってすぐにリリースされたシングル「バタフライエフェクト」ですら、少なからず片鱗が見えるはず。

バタフライエフェクト / 私立恵比寿中学

安定したキュートな歌声を聴かせる星名美怜、時に憂いを秘めながら力強く歌い上げる柏木ひなた、この2人に関しては基礎固めというか、グループに一人は居ないと困る存在。そこに、まっすぐな歌い方が特徴的な安本彩花、不安定ながら繊細さの光る松野莉奈が歌に広がりを持たせる。特に松野は9人時代なんて歌唱力の問題で主にセリフ要因だったのが急成長を遂げて、今ではなくてはならない歌声のひとつになった。そして、最大の特徴といっていいのが、タイプは違えど曲に合わせて声を変化させられるオールラウンダーが2人も居るというところだろう。廣田あいかは地声でもあるアニメ声からハードなガナリ声まで大きな振れ幅を持ち、真山りかもまたシリアスな曲からふざけた曲まで幅広い範囲でミートさせてくる。エビ中の楽曲の幅が広がっても結局エビ中らしい雰囲気が出せるのは、何よりこの2人のカバーがあってこそであろう。

この既成メンバーに、さらに荒削りながらパンチ力のある曲には大いに威力を発揮する小林歌穂、舌足らずで特徴的な歌声から印象に残るパートに配置されがちな中山莉子という、9人時代には居なかったタイプの2人が入ったことで、さらなる化学変化がエビ中のなかで起こったと考えている。あえて誤解を恐れずに言うと、「力強さとバカバカしさ」。『金八』では、この2人の個性を大いに尊重しつつ、ライブを意識した勢いのある楽曲が並んでいるのが特徴的といえる。特に「キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~」で突拍子もなく登場する小林のセリフパートは謎の加山雄三チックでバカバカしい。

そんなアルバムも、中盤の「フユコイ」「PLAYBACK」「幸せの貼り紙はいつも背中に」で一気にシリアスモードに。それでも8人の歌声はピタッと嵌るし、なにより「フユコイ」での中山のパートは曲の世界観ともピッタリで強い印象を与える。パワーだけでなく、9人時代に持っていた繊細さもまた、いまだ持ち合わせている・・・その要素は『金八』では随分薄くしか出てないけれども。
9人時代にリリースされた1stアルバム『中人』は、代表曲も多いしポップな印象が残る作品なので、それと比べると『金八』は特にソーラン節「大漁恵比寿節」からサンバ調の「買い物しようと町田へ」に突入する終盤含め、カオスな印象の強い作品で好き嫌い分かれるのかもしれない。それでも楽曲自体は一つ一つ作り込まれてカッコイイし、何より前作よりもメンバー各々の役割がはっきりと表れていて、曲それぞれで8人の役者がドタバタ劇を繰り広げているような感じがして、聴いてるだけで面白い。そこに、今のエビ中の魅力をひしひしと感じている。

あと、なんだかんだライブをちゃんと見るようになったのは8人時代からってのもあるので、個人的な思い入れも強いのは確かにある。当たり前のことだけど、グループのなかで1人でも好きじゃない人がいたら、グループとして好きになることはまずない。ただ、エビ中に関していえば、8人それぞれ個性バラバラだけどそれぞれ欠かせない存在だし、それぞれ面白いし嫌いになりえないメンバーが揃っていると思ってる。だから、ここまで嵌ってしまってるんだろう。。過去、何かとメンバー変更が多かったグループではあるけど、しばらくはこの8人で・・もうしばらくは見ていたいなあと思う今日この頃。

ハイタテキ! / 私立恵比寿中学


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