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biscuit notes

Spotifyプレイリストとか音楽のもろもろをつらつらと

STROLL AND ROLL / the pillows


結成26年目のthe pillowsが、今年4月6日にリリースした20枚目の最新アルバム。そこから何より感じるのは、新たなフェーズへ向かうバンドの意思表示のような、強いメッセージ性というよりも・・いや、その要素はあるにはあるけど、もっと純粋に「良い曲を良い演奏で」という、それこそこのバンドの本筋といえるもの。それがこの26年目にして、更にはっきりくっきりと表れた印象。

このバンドの歴史を簡単に説明すると、結成から当時リーダーでもあった上田ケンジ(b)が脱退するまでは第一期(1989-1993)と呼ばれる。その頃はまだ音楽性が確立されていたわけではなく、「The Beatlesのように良い楽曲を奏でたい」ということ、ただそれだけが彼らの共通認識だった。その後の第二期(1994-1996)では山中さわお(vo.g)がリーダーとなり、外部の意見なども取り入れながら、売れることに意識を置いたオシャレなポップミュージックを追及した。しかし、シングル「Tiny Boat」の売上不振に意気消沈し、改めて自らの信じるバンドサウンドに回帰していったのが第三期(1996-2012)である。

この時期のサウンドでキーとなる言葉は「オルタナティブ」、つまり、「王道ではない」、あえて悪い言葉で言えば「捻くれた」独自の音楽性が、この時期にようやく確立していったのである。無論このころも「良い楽曲を」という意識は変わらず、そこに、例えば変則的なリズムを加えてみたり、極端な例だとギターの弦1本1本を別録りするなど、そういった「オルタナティブ」というスパイスを加えていくような具合。そのスパイスも、第三期のなかでも徐々にシンプルにしていくなどの変化を見せていた。

第三期では最後となってアルバム『TRIAL』は、良い曲も多くて個人的にも好きな作品なのだが、一方でなんとなく疲労感みたいなものも感じられ、「え、このあとどうなるんだろう??」という一抹の不安を感じた。現にこの時期、山中さわお以外のメンバーが楽曲に対してあまり意見を言わなくなるなど、メンバー間の意識に決定的なズレが出来ていたようで、バンドはその後おおよそ1年間のリハビリ期間を設ける運びとなった。こうして第三期は終わりを迎えた。

そこから2014年にリリースされた『MOONDUST』は、正直ちょっとビックリした。サウンドやメロディなどには、第三期につくられた楽曲があったこともあり比較的オルタナ要素も残っているのだが、特に歌詞、曲のタイトルに驚くほどシンプルさが増した。いや、厳密にはその片鱗は第三期の終わりのころにはあったような気もするが…。とにかく、捻くれたオルタナティブとシンプルなロックミュージックが混在する、第三期から新たに第四期へ移行しようとしていることが間違いなく感じ取れた。

前置きが長くなってしまったが、そういった流れのなかでリリースされた『STROLL AND ROLL』。まさに第四期の幕開けにふさわしい一枚となった。初めて聴いた時に感じたのは、とにかくスーッと音楽が耳に入ってくる、オルタナティブ特有の良くも悪くも耳に引っ掛かる感じがほぼ無いということ。メロディで言えば、アルバム1曲目からガツンとくる熱唱をきかせるサビが特徴的な「デブリ」から、初期によくみられた哀愁的なメロディラインが特徴的な「エリオットの悲劇」まで、多彩な楽曲が並んでいるのだけど、全体を通して今までになく起伏が穏やかに感じられる。歌詞にしても、思いをシンプルに描写した楽曲が多く並んでおり、「ロックンロールと太陽」なんて第三期では確実に採用しなかったであろうほどのシンプルさ。特にタイトル曲である「Stroll and roll」では、その思いが如実に表れている。


仲間と出会って居場所が出来た今
気ままなリズムで踊り続けたいな
敵がいたって味方もいる
信じたい 信じるよ


今回、前任のサポートベーシストが離脱したこともあり、第一期に在籍していた上田ケンジ、第二期と第三期の初期を支えた鹿島達也、THE PREDATORSで一緒にプレイしているGLAYのJIRO、など、計5名の多彩なベーシスト、というより仲間と呼んでもおかしくないメンバーたちを迎えてレコーディングをおこなった。出来上がった曲に応じて、それに似合いそうな仲間と一緒に、もちろんメンバーである真鍋吉明(g)、佐藤シンイチロウ(dr)も一緒に、みんなで純粋に「良い曲を良い演奏で」一曲一曲つくりあげた結果が、このアルバムなのかなと。第四期は、本人曰く「末期」、つまり最後の期間らしい。それがいつまで続くのか、第三期のように長い期間になるのかは誰にもわからないけれど、the pillowsの音楽的なアプローチが、ある極大値にまで到達したのは間違いないだろう。

それにしても第四期がはじまる前後は、あまり新曲はつくりたくない、昔つくった曲を懐かしみたいモードだと公言していたのに、第三期ほどのペースではないにしろ、なんだかんだこうして良い新作をつくり続けてるんだから、わからないもんだなあと。。もしかしたら第五期とかもあったりするんじゃない?とか思ってみたり。でも、そんなことはどうでもいい。これからも良い曲つくってくれれば何も問題ない。

カッコーの巣の下で / the pillows

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